飛行機でたまたま隣になったタイ人女性
日本人ですか?
その一言から始まり、僕たちの会話は離陸した後も断続的に続けられた。
カタコトの日本語と英語と時々不意に出てくるタイ語を駆使して
一生懸命コミュニケーションを取ろうとしていた。
日本人は基本的に口角が下がっていて少し冷たい印象を持っていたけど、あなたは違うねと褒めてくれる。
たった数週間触れた英語がパッと出てこないことに若干気持ちが沈んでいた自分がバカらしくなった。
僕も負けじと日本語と英語、時々ジェスチャーを駆使しながら
スマイルと伝われという気持ちをしっかり掴んだまま、眠気を我慢しながら会話を楽しんだ。
海外での生活中、コミュニケーションで何より大切だと思っていたことを
親切にも開始と同時に、体験から学ぶ機会を与えてもらったみたいだ。
ただのイメージだったのが、体験したことで教訓として深く記憶に刻み込まれた。
連絡先の書いたメモを頂き、バンコクに来ることがあれば、連絡するように言ってくれた。
僕も何かお返しをしたく、使うのは当分先だと思っていた持参したポストカードにメッセージを描いた。

心が静かにじんわりと温かくなっていくのが分かった。
こんな気持ちになったのはいつぶりだろう?
いきなりこれぞ旅の醍醐味!と思う出来事だった。
タイはどうやら日本とは対照的で、距離感が近く人があったかいらしい。
タイという遠い国の存在がグッと近づいた。
